実と殻の区別

このお正月にやろうと決めていた事のひとつ。
映画『ストレイト・ストーリー』を観ました。

この映画が大好きで、幾度となく観てきたのですが、
今回はかなり久しぶりの鑑賞。7年ぶりかな?

主人公の老人アルヴィンが、10年前に喧嘩別れをしたままのお兄さんに会いに、
トラクターに乗って350マイルの旅をするロードムービー。
全編、トラクターの速度に合わせてゆっくりと動く映像は、
自分が何かに(主に仕事にですが)追い詰められている時に見てしまうと、
その自分の気持ちの余裕のなさを戒められてるようで辛くなるのです。
去年の秋頃から無性に見たくなっていたのですが、お正月まで我慢しました。

セリフの少ない映画なので、
何度も見返しているとその会話のほとんどを覚えられそうなくらいなのですが、
全てのセリフに、それぞれの『人ひとりの人生』が詰め込まれています。
旅の途中で出会った若者に、歳をとっていいと思うことは何か?と聞かれ、
『経験を積んで、実と殻の区別がつくようになった』と答え、
逆に、歳をとって最悪なことは何か?と問われると、
『若い頃のことを覚えていることだ』と答えます。
この言葉の持つ意味が、物語の中で回収されていく感じ。

アルヴィンが、自分の人生に落とし前を付けていくような旅。
最後に1本のビールを飲む姿が胸に響きます。
ラストシーンも本当に素敵です。
アルヴィンを演じた俳優、リチャード・ファーンズワースさんが、
この出演を最後に、病気を苦に自死されたそうなのですが、
誤解を恐れずに書くと、
その選択をした気持ちを、どうしても理解できてしまうのです。
うまく書けないのですが、
人ひとりの人生、ひとつずつの選択、そのすべてを肯定したくなる映画です。

この映画を見たくなるタイミング、実際に鑑賞できるタイミングは、
私のひとつのバロメーターのような気がします。
本当に大好きな映画。
きっとこれからも何度も何度も見返すと思います。
そして、5年後、10年後、20年後、自分が歳を重ねるたびに、
先に紹介したセリフの持つ意味や理解度が変わっていくのだと思います。

 

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