月別: 2022年8月

予感

鋭意工事中だった富津海岸のセカンドハウスの現場。
室内の工事はほぼほぼ終了し、あとは庭先のプールを含む外構工事を残すのみとなりました。

玄関を開けて最初に目に飛び込む光景がこちら。

ホールの先には屋根の付いたバーベキューテラス。
その向こうにプールが設置され、敷地の向こうは広大な防風林。
ホール、テラスと続くリビングと天井の仕上を繋げたことで、
とても気持ちのいい奥行き感が出たように思います。
外構が完成したら、かなりかっこよくなるのではなかろうか。

設計事務所のHPなのに、全然完成写真を載せなくて、
工事中の紹介までで終わらせてしまってばかりいるのは(いや、それさえあまりないけど。笑)
いかがなものか?とは思うのですが、
家づくりって、出来上がってしまったものより、
その先のいろんな景色を予感させる途中経過こそが愉しいんだと思うんですよね。
まぁでも、途中を見せられたなら、その後の完成も見たいですよね…。笑
善処します!ちゃんとします!笑

明日で8月も終わりですね。暑い暑い夏でした。
前半はほぼ引きこもり状態で図面を描きまくっていて、その反動か、
後半は連日外出の予定で埋まってしまい、ほとんど机に座る時間も取れずに終わりました。
9月はもう少しバランスよく仕事をこなしていけるといいな…。
20年以上やっていても、ちょうどいい働き方が構築できないものです。
本気で働き方改革をしないと、サブリエさん、ブラック企業になってしまいますよ…。笑

無知の知

速読や斜め読みとは程遠い読み方しかできず、1行ずつじっくり読み進めるタイプなので、
読書家と呼べるほどの読書量ではないけれど、毎日少しの時間でも何かしらの本は読んでいる。
その程度には読書が日常に入り込んでいるはずなのに、この本の読了後、
「あぁ…久しぶりに読書をした気がする」と感じました。

『それで君の声はどこにあるんだ? -黒人神学から学んだこと』榎本空著 岩波書店

書くってこういう事なんだな、読むってこういう事なんだな、と、
そんなことまで考えさせらるすばらしい一冊でした。

日本の大学で神学を学んだ後、台湾の長栄大学、バークレイの神学校を経て、
ニューヨークのユニオン神学校へ留学し、黒人神学の第一人者である
ジェイムズ・H・コーンに学んだ著者の、言うなれば留学日記。
アメリカの黒人差別問題にもキリスト教にも全く知識の足りない私には、
特に前半第一部には、知らない言葉や出来事が次々とでてきて、いちいちつまづきます。
おそらく敢えてそうしたのでしょうが、こういう本には珍しく説明的な解説が一切ないので、
その都度、その言葉の意味を調べてみたくなるのですが、
一読目は、知らないことを知らないまま読み進めてみようと決めました。

本文中、講義での描写の中に、

 

まるで一文字でも見過ごせば大事な何かが失われしまうかのように目を見開いて、
手を振り上げ、息を大きく吸い込み、一語一語ゆっくり読み上げるコーンの声につられるように、教室はだんだんと揺れていった。

という一文があるのですが、この本自体がまさにそんな感じ。
読書中って、時々気持ちが本から離れて他の事に意識がいってしまう瞬間があり、
普段はそんなに気にならず、そのまま読み進めてしまっているのだと思うのですが、
この本は、少しでも意識が本から離れてしまっていた事に気づくと、
また戻って読み返さずにいられない。
本当に、一言一句読み落としてしまいたくないと思わされるのです。

内容については、私の乏しい語彙で感想を述べることは到底できないのですが、
何かを知るきっかけやタイミングには大きな意味があり、
知らなかったことをこの本で知れて本当に良かったと思います。
もちろんすべての物事には表と裏があるわけで、
ここに書かれている『黒人と神学』が、全てでも、たったひとつの真実でもないのですが、
そこがとてもニュートラルで、全く偏った思想として書かれていないので、
なおさらいろんなことを考えさせられます。

本書の中では、著者が育った沖縄の伊江島の歴史や、
植民地支配を経験した台湾の人々の話にも触れられています。
著者の榎本さんが、コーン先生の
『黒人以外の人間が、黒人の背負ってきた苦しみや痛みを理解するのは難しい』
と言うつぶやきを聞き、同じつぶやきを過去にも聞いてきた…という回想で語られる場面です。

読んでいる最中には、フランクルの『夜と霧』が何度も思い出されました。
この本で語られている事の本質とはずれてしまうのですが、私個人の読後の感想として、
全ての国に重い歴史があり、その歴史の積み重ねがその国の国民性、アイデンティティを
形成しているわけで、もっと言えば、人ひとりひとりに他人には背負えない荷物がある中で、
今、世の中が向かっているグローバリゼーションへの流れがとても虚無なものに思えてきます。
それって無理なんじゃないのかな…と。その流れがどんどん歪みを大きくしているような…。
飛躍しすぎかもしれないけど、最近国内で起きているいろんな事件の背景にも思いが及びます。
神とか信仰とか、そういうものと人間の関係性についても考えさせられる読書経験でした。

一読した後、これまで表面的にしか知らなかった、知ろうともしなかった、
アメリカの歴史について、少し調べ始めています。
そうすると今度は、今まで何気なく見てきた映画の中に、
この黒人差別問題が主題の作品がたくさんあったことが思い出されてきます。
その中のひとつ、『アメリカンヒストリーX』を、久しぶりに再視聴してみました。
元々大好きな映画で何度も観ていて、内容も覚えてはいたのですが、
やはり今までとは全然違う視点で観ることができました。
先に書いた『黒人以外の人間が–』はもとより、この歴史を持つアメリカという国に生きる、
白人の人たちの気持ちや価値観だって、到底私なんかに理解はできないんですよね。
見方が変わっても、救いのない物語ではあることには変わりなく、悲しいラストなのですが、
怒りや憎しみは人を幸せにしないという普遍的で骨太のメッセージがまっすぐ伝わってくる、
こちらも本当にすばらしい作品です。未見の方にはぜひお勧めします。
エドワードノートンの演技がとにかくすごい!
(この映画を過去に何度も観てきたのは、白状すると、
 単純にエドワードノートンが大好きだからなんですけどね。笑)

件の『それで君の声はどこにあるんだ?』は二読目に入りました。
何度も読み返して自分の中に沁み込ませたい、大切な一冊との出会いとなりました。
この夏一番の収穫。

好きも嫌いも分かりあえる人

現在、8月13日の14:50。
予報では台風接近中で、間もなく大雨になるらしいのですが、
にわかに信じがたいほど、外は静かです。
小さい台風らしいから、突然風雨が強まるのでしょうが、
このブログを書き終えるのと、天候の変化、どちらが早いでしょうねぇ…。笑

午前中は、工事進行中のYさん夫婦との打ち合わせ。
日程を決めた後に台風が発生したので、リスケも考えたのですが、
午前中はまだ大したことなさそうだったので、
事務所での打合せ予定を駅ビルのカフェに場所だけ変更し、決行。
大したことないどころか、行きも帰りも傘もさす事なく済みました。

このYさんご夫婦、特に奥さんと私は、
『マイノリティかもしれないけれど、どうしても譲れないデザインや機能に対する嗜好』
が、おもしろいほどよく似ていて、モノを選ぶ基準はもとより、
決定に至るまでの思考の経緯までそっくりなのです。
その部分の価値観がここまで合致する人は、友人知人を含めても初めてかもしれません。
こだわりたいところが同じであること以上に、
どうでもいいコト、いらないと思うモノが一緒というのは、本当にやりやすい。笑
なので、プラン作成から今日に至るまで、こちらからの提案を却下されたことが一度もなく、
Yさんも、自分の意向が伝わらないというジレンマを感じることなく進んでこれたようで、
打合せはいつも、本当に愉しい時間となるのです。清々しいとさえ感じます。

そんなY邸。
こちらで報告しそびれていましたが、先月末に上棟し、
お盆明けからは本格的に木工事が進みます。

見晴らしも日当たりも風通しも最高なこの現場。
ご夫婦おふたりの明るくおおらかなお人柄そのままに、
愛猫と暮らす愉しい家になることでしょう。
11月の竣工がとても楽しみです。

 

記憶の紐づけ

もう30年くらい前の事になりますが、当時勤めていた工務店では、
10時と3時に必ず休憩があり、社長の奥さんがおやつを用意してくれていました。
そのおやつに柿の種が出てくると、あるパートの事務員さんが、必ず、
「柿の種とコーヒーって合うよね」「柿の種にはコーヒーが一番合うんだよね」
と言っていたんです。もう絶対、必ず。笑

その会社を辞めて以来、そのパートさんとは一度もお会いしていないのですが、
30年経った今も、柿の種を食べるたびにその人の事を思いだすのです。

時はさらに遡り、高校時代。
友人に慢性の鼻炎に悩まされてる子がいて、常にルルの点鼻薬を持ち歩き、
休み時間のたびにシュッシュッと鼻にスプレーしていました。
その子が、「いつか私が死んでも、みんな、ルルの点鼻薬を見るたびに私を思いだしてね」
とよく言っていたんですよね。笑
彼女との付き合いは今もずっと続いていて、新たな思い出もたくさん作ってきたし、
たしかその数年後には鼻の手術をしていたので、もう点鼻薬は持っていないだろうし、
そもそも、ルルの点鼻薬が今も市販されてるのかも分からないのですが、
もしそれを見たら、瞬時に彼女の事を思いだすのはまちがいないと思います。

記憶の紐づけって本当におもしろいですよね。
何をもって自分を覚えてもらいたいか…なんて自己啓発的な本人の欲望を軽く飛び越えて、
思いもかけない物事で人の記憶に残っていくのですから。

私はどんな風にみんなの記憶に残っていくのだろうか…。
久しぶりに柿の種を食べながら、そんなことに思いを馳せる山の日。

柿の種にはコーヒーがよく合います。笑

農家さんに感謝とエールを。

スーパーマーケットのない街に暮らしてはいますが、
近所に小さな八百屋さんや農家さんの直売所が揃っているので、野菜にだけは事欠かず、
新鮮なものを、今のご時世にはありがたいくらい安価で購入できています。

最近は、主食もおやつも野菜になりつつあります。笑
いくら食べても罪悪感を感じないのが良いですよねー。

さっき、近所の八百屋のおじさんと立ち話をしていて、
東北や北海道の農家さんが大変な思いをしているという話を聞きました。
北海道の玉ねぎがかなり被害を受けていて、
一度落ち着いていた玉ねぎの値段がまた高騰し始めているそうです。確かに高かった。
スイカ農家さんは、大雨でスイカが浮いてしまう程の被害だそう。
浮いてしまったら、芯から水が入ってしまうのでもうどうにもならないんですって。
せつないですね。。。

異常気象が当たり前になりつつある昨今。
不作が、『今だけ』とか『今年だけ』という問題ではなくなってきているのでしょう。
農家さんの苦労や不安は、私なんかに推し量ることはできないけれど、
多少高くなったとしても、こうやって新鮮な野菜を当たり前に食せることに感謝して、
今日もありがたく美味しくいただきたいと思います。

大人の正しい夏

気温はぐんぐん上がったようですが、いい風が吹いていて、
今日は一日エアコンを付けずに快適に過ごせました。
でも、室内の温度計を見るとちゃんと32℃くらいあるんですよね。
少し前に、ここは湖の近くだから涼しいかも…と書きましたが、
もしかしたら、ただ単に私の暑さを感じる感覚が鈍いだけかもしれません。笑

子供の頃には、何が美味しいのかさっぱり分からなかったけれど、
大人になってしみじみその美味しさを認識できたものの筆頭に『ところてん』があります。

これは、エアコンの効いた部屋で食べるものではなく、
少し暑い日に窓を開けて風を感じつつ、
セミの声を聴きながら食べるのが正しい食べ方な気がします。笑
ちなみに器は、私の大好きな陶芸家・小沼寛さんの作品。
食事で涼を感じたい時は、器の選択も大事なのです。
この器で食べる寄せ豆腐も格別♡

雨の日が好きになったのも、日の出や夕焼けの空に心が揺さぶられるようになったのも、
おやつにところてんを食べるようになったのも、食べるものに合わせて器を選ぶ楽しみも、
大人になって手に入れた豊かさなんだろうな。
歳をとるって、本当に愉しいことばかりです。

DA PUMP

今の大所帯のDA PUMPの事はあまりよく分からないのですが、
結成当初の4人組のDA PUMPが、実はとても好きでして…。

彼らの全盛期だった20年ほど前。
当時は別にファンだったわけではなかったのですが、
友達がシングルコレクション的なベストアルバムをCDに焼いてくれたのです。
で、普段は、時々聴く…くらいだったんですけどね。

その頃、ものすごくスケジュールがタイトな住宅の設計をしていて、
ラスト1週間くらい、飲まず食わずの監禁状態みたいに図面を描き続ける期間がありました。
描き続けて、限界が来たら数時間寝て、起きたらまたすぐ描きだして…
みたいな生活が本当に1週間くらい続いたのです。
(ちなみに、まだ手描きで図面を描いていたな。最後の手描き図面の仕事だったかも)

で、その時にCDラジカセでDA PUMPのそのアルバムを聴いていたのです。
リピート機能を使って延々と。
CDを変えるという余裕さえなくて、寝る時に止めるという事すらする気力がなくて笑、
1週間、24時間、ずーーーーーーーっと流し続けていたんですよ。
嘘みたいな話なんだけど、実話。

そのアルバムをくれた友達に、
「間違いなく、世界で一番DA PUMPを聴いている人間だよ、私は」
と報告したら大ウケされて、すっかり『カナザワ=DA PUMP』というイメージが付いたらしく、
何年経ってもそれをネタに笑われるのです。
仕事が大変とか終わらんとかメールに書くと、すかさず、DA PUMPを聴け!と返事がきます。笑

そんな思い出があるから好きという訳ではないのですが、
何年か前にYouTubeで当時のPVを見ていたら、なんだかキュン♡としてしまって…。
4人それぞれの個性、4人並んだ時のビジュアル、PVの完成度、
キレキレのダンス、ISSAの歌唱力と歌声、楽曲、
すべてがパーフェクトなんですよ!本当にかっこいい。しみじみかっこいい。
YouTubeだとつい映像に目が釘付けになってしまうので、
昔みたいに仕事中に流すことはできないのですが、
時々、ご褒美のように見まくるのです。もうホントに大好き!笑笑

あの頃ほどではなかったけれど、昨日までかなり作図に追われていて、
すごい集中力で図面を描き続けていたのですが、やっと一段落。
なので、こんな記事を書きたくなったわけです。笑

もちろん、今のBGMはDA PUMP♪ 
あれだけ聴き続けて体に沁み込んでいるので、当然、全曲歌えます。
次はダンスを習得しようかな…。笑

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