おかえり

去年の11月、北海道に住む友人が帰省した際に私の事務所にも遊びに来てくれて、
本棚を眺めていた彼女に「この本、すごくいいよ」と一冊の本を貸しました。

北海道に住む人に、一番大事にしている本を貸すという行為が、なんだかおかしく、
また、なんだかとても幸せな事のような気がしたものです。

そして昨日、「2回読み返した。とても良かったよ」と書かれた手紙と、
彼女が仕込んだとびきり美味しい自家製味噌と一緒に、本が帰ってまいりました。

おかえり。私の座右の書。

『自分の仕事をつくる』
西村佳哲著  晶文社

働き方研究家という肩書きを持つ著者が、
国内外の様々の人の働き方・仕事考をインタビューした様子がまとめられたもの。

著者の西村さんは、まえがきで、
私たちはいろんな人の「仕事」に囲まれて日々を過ごしているわけだけれど、
最近、つくり手の「こんなもんでいいでしょ」という腹の内が伝わってくるものが
溢れている事に触れた上で、こう書いています。

以下抜粋。

 * 
    
人間は「あなたは大切な存在で、生きている価値がある」というメッセージを、つねに探し求めている生き物だと思う。そしてそれが足りなくなると、どんどん元気がなくなり、時には精神のバランスを崩してしまう。
 「こんなものでいい」と思いながらつくられたものは、それを手にする人の存在を否定する。とくに幼児期に、こうした棘に囲まれて育つことは、人の成長にどんなダメージを与えるだろう。
 大人でも同じだ。人々が自分の仕事を通して、自分たち自身を傷つけ、目に見えないボディーブローを効かせ合うような悪循環が、長く重ねられている気がしてならない。
 

 *

気持ちに迷いが生じた時、悩んだ時、この数行を読むだけでも勇気をもらえます。
もちろん、本編もとても上質。
特に、パン作りをしている甲田幹夫さんのインタビューに出てくる、
「パンは手段であって、気持ちよさを届けたい」という言葉や、
ダブルバインド(二重拘束)に関する記載は、私にとってはとても考えさせられるものでした。

この紹介を読んで興味を持たれた方には、是非、一読される事をお勧めします。
多分、”いつもそばに置いておいて、何度も読み返したくなる本”に加わると思いますよ。

この本の中で紹介されてるのは、全て、ものづくりやデザインに携わっている人々なので、
もしかしたら、偏った印象を受けるかもしれません。
でも、ここに書かれている本質的な部分は、きっと誰にも共通してる事なんだと思うのです。
それを証拠に、初めて読み終えた時に、最初に思ったのが、
「あぁ・・・もっと心を込めて食事を作ってあげなければ・・・」でしたから(笑)。

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