月別: 2022年9月

お客様と業者さんの真ん中に居ますよ!

友人から、自宅で週末だけの小さなパン屋さんを始めたいと相談を受けました。
自宅を改装して、飲食店や食品の製造業の許可を取るには、
大きな問題として、事業用とは別に住居用のキッチンが必要な事と、
事業用キッチンを他の部屋から独立させなければいけないという課題が出てくるのですが、
その家はたまたま二世帯住宅でもうひとつキッチンがあり、
たまたま1階のキッチンが独立型で、すでに扉もしっかりついているという好条件。
さらに、昨年法改正があり、以前と比べて必要な設備のハードルがかなり下がったので、
最低限の工事で夢が実現できるという、ラッキーな案件なのでした。

今日から、そのキッチンの改装工事が始まりました。
元々ついていたカップボードを改造して、新たに手洗器を設置。
あとはパンを焼くための業務用オーブンの設置と、エアコンと食洗機の新設。
その他の細々な工事はあれど、1週間で工事も終わり、
来週には保健所の許可も取れる予定です。

パン屋さんとしてのオープンはもう少し先になる予定ですが、
彼女の作る天然酵母パンは本当に美味しいので、
無事にオープンしたら、こちらでもご紹介しますね!

これからますます、自宅を改装してお店を開きたい人は増えるでしょうね。
このパン屋さんは窓先販売の予定なので、特に店舗工事は発生しない為、
今回はデザインの仕事ではなく、あくまでも最低限の費用で設備を整えるための工事ですが、
そういう仕事こそ、どこに相談したらいいか分からずに動けずにいる人も多そうな気がします。
ご自身が、あるいは周りの人が、
「できることならやってみたいなー」というところで迷っていたら、
とりあえず、相談してきてほしいですね。

店舗に限らずなのですが、家の中のちょっとした困りごとなんかでも、
意外と、「こんなことは設計事務所には頼めない」と思い込んでる人が多いのですが、
設計者が動くような仕事じゃなかったとしても、信頼できる業者さんを紹介できますから、
もっともっと、気軽に相談してもらえる存在になりたいな…と、いつも思っているのです。

サブリエはこれからも、『あなたの街の暮らしのよろず相談所』を目指します。笑

低気圧にやられる

台風14号。
なんだか粘っこい台風ですね。

気圧のせいでなんとなく体調も悪いし、
家に引きこもっているのも息苦しくなり、
晴れ間を狙って散歩へ。

風の音、波立つ湖面、そして最後の力を振り絞る蝉たちの声。
気持ちのいい時間。
家の近くにこの場所があって本当に良かった。

湿り気

現場の定例打合せ。

最寄駅から現場までは徒歩15分程度。
往路はなかなかの坂道続きではありますが、歩いていてとても気持ちのいい景色が続きます。
ついこの前までは現場に着くなり汗が吹き出し、びっしょりになっていたのですが、
この一週間で本当に季節が変わりましたね。
これから竣工までの現場打合せは、気持ちのいいお散歩の時間となりそうです。

線路沿いの静かな道を歩き、川を渡り、雑木林の脇を抜け、
最後に現れるのがこの石階段。

初めてここを通った時には、こんなきれいなニホントカゲとも出会えました。

それにしても、苔というのはどうしてこんなに人の心を魅了するのでしょうね。
この現場は日野市なのですが、青梅とかあきる野とか奥多摩とか、
東京の西側には苔に覆われた本当に素敵な景色が多いんですよ。
もっと大々的に『苔の町』としてアピールすればいいのに…といつも思います。

湿度の高い空気の中にいるのはやっぱり不快なんだけど、
景色でも食べ物でも人の心でも、湿り気を感じるものが好きなのです。
嫌いなものは?と聞かれると「カサカサしたもの全般」と答えるくらい。笑

建築素材の中でも、好きなものと嫌いなものが、割とはっきりあるのですが、
その違いって何なんだろう?と考えてみると、意外と含水量だったりするのかも…
と、今これを書きながら気が付いてしまった。これは大発見かも。

*

現場日記のつもりで書き始めたのに、また違う話になってしまいました。笑
Y邸はすこぶる順調に進んでおり、心配していた建材や機器の納品遅延の影響も受けずに、
予定通り竣工を迎えられそうです。ありがたい。

高台に建つ家は、秋空の下、気持ちよさそうに我が身の完成を待っています。

暮らしの中の身体感覚

世の中がどんどん便利になって、その恩恵も十分享受しているくせに、
便利になり過ぎて人間の感覚が麻痺していくことを憂い、恐怖に近い思いを抱いている。
そう思うならまず自分が少し不便なものを選択して、
肉体的な感覚を取り戻す生活をすればいいだけなのに、
それもやらずに、便利な方へ、楽な方へと逃げてしまいがち。
受け入れることにも抗うことにも消極的な自分に悶々としながら暮らしていることが、
ここ数年感じている、自分自身の中のアンバランスさの元凶なんだろうな、と感じます。

これ、私だけじゃない気がするんですよね…。

*

たしか二十歳くらいの頃だったと記憶しているのですが、
新聞に載っていた、どこかのメーカー(だったかな?)の広告に、
『便利はうれしい 不便はたのしい』
というコピーがあって、ものすごく印象的で気に入ってしまったんですよね。
30年以上前のことだから、今に比べたらまだぜんぜんかわいい『便利さ』だったろうし、
というかむしろ、その頃の便利はすでにもう今の不便に属しそうな気もしますが、
いまだに、座右の銘と言ってもいいくらい、私の根幹にある言葉になっています。

でも。

便利になっていくことに素直に感謝しつつも、
不便を楽しむ、つまりは、自分の体の感覚を意識できるような生活を送っていきたい。
シンプルな願望だとは思うのですが、
そんな風に暮らすには、ちょっと『便利』が底なし沼になり過ぎてますよね。
今って、便利すぎることが現代人のストレスの元になってる気がするのです。

*

やはりこれももう20年近く前の事なのですが、お施主様とガスコンロを選んでいる時に、
これでもか!というくらい便利機能が満載されているコンロを選ぼうとしてる奥さんに、
「そんなもの使ってたらおバカさんになっちゃいますよ」
と言ってしまった事があるのですが(笑)、その姿勢は今も実は変わっておりません。

いろんな意味で、バランスを保つことがとても難しい時代になってしまったけれど、
『便利はうれしい 不便はたのしい』
この言葉をしかと握りしめて、それを実感してもらえる家づくりをしていきたいものです。
その提案に説得力を持たせるためにも、私自身の暮らしも見直していかねばです。
とりあえず、「めんどくさーい」という口癖を直すところからだな…。笑

父と娘

先日の夕方、ちょっと野暮用があり久しぶりに実家へ。
用を済ませ、夕飯をごちそうになって、8時頃実家を出て帰宅しました。

実家へ帰る時は車の事が多く、たまに電車で行くと、
帰る時には必ず父がタクシーを呼んでくれていたのですが、
(帰りはだいたい持たされるお土産で荷物が多くなるので、笑)
先日は、コロナの影響で台数が減っているのか、ぜんぜん電話が繋がらず、
やっと繋がっても、何時に行けるか分からないという回答だったので、
歩いて駅まで行くことにしたのです。

夜にひとりで歩いて帰ることは、確かに今までほとんど無かったのですが、
父が、心配だから途中まで送っていくと言いいだしまして。笑

大した距離ではないんですよ。ゆっくり歩いたって20分足らず。
実家の周りは住宅街なので、たしかに人通りは少ないけれど、真っ暗なわけでもなく、
5分も歩けば幹線道路に出るので、決して危ない道中ではないのです。

「いやいや、むしろ、別れた後のお父さんの方が心配になるから大丈夫だよ」と、
何度も断ったのですが、一度言い出したら引かない父。
観念して、送ってもらう事になりました。

*

父とふたりで並んで歩くなんて、いったいいつぶりなんだろう…。
84歳の父が、52歳の娘を本気で心配して夜道を一緒に歩いているというシチュエーションが、
恥ずかしいやら可笑しいやらなのですが、『あぁ…私は永遠にこの人の娘なんだな』と、
そんな当たり前のことをしみじみ感じる夜の散歩になりました。
大した会話もしなかったけれど、父と並んで歩いたこの5分間の光景は、
この先ずっと忘れられず、ことあるごとに思い出しそうな気がします。
ちょっと幸せな気分になりました。

仲のいい父娘という関係でもなかったし、
ご多分に漏れず、父の事を嫌っていた時期だってあったけど、
歳をとると、いろんなこと、特に家族にまつわる複雑な気持ちが融解していくものですね。

*

それにしても、いまだに毎日8,000歩は歩いているという父の足腰の強さには驚かされます。
下手すりゃ、私よりもスタスタ歩く。笑
見習わねば。

「いつかは世話にならなければいけなくなるかもしれないけれど、
 出来る限り迷惑かけないように頑張って元気でいるから、
 それまでは、お前たちは自分の生活に集中しなさい」
と、いつも言ってくれて、実際に、80歳を超えた両親が元気に暮らしてくれている事が、
どれだけ姉や私の救いになっているのだろう。
その言葉に甘えて、全然親孝行らしい事はできずにいるのですが、
心配かけるのも親孝行のひとつだと思うので、まだしばらくは、
甘えながら、頼りながら、頑張って生きている娘の姿を見せていければと思います。

そういえば、帰りがけにお小遣いを2,000円、父がくれました。笑
52歳…。ホントにこれでいいのか?と思わなくもない…(^^ゞ

 

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