職人の道具

リフォーム現場に、表替えを終えた畳が入りました。
今回は、打合せの段階で畳表のサンプルを用意して、
国産の井草と中国産の井草を見比べ、差額も伝えた上で国産を選んでもらったのですが、
やはり、目の柔らかさやしなやかさが違う。
畳になってしまえばそんなに分からないかもしれないけれど、表で見比べると全然違うのです。
天然自然素材故に、人工的な商品独特の均一的なきれいさがないのも、個人的には好き。
1本1本の草が均一じゃないからこそ、それを美しく仕上げるために、
とても贅沢な草取りをしている事も、今回、畳屋さんに教えてもらって初めて知りました。

特に指定しなければ、今は中国産の井草が使われるのだそう。
井草どころか、樹脂の畳もたくさん出回っているし、
そもそも、本当に和室を作る機会が減ってしまったけれど、
久しぶりに真新しい畳の匂いに包まれ、日本人のDNAが呼び覚まされました。

工務店に勤めていた頃、仕上表には必ず畳表を『備後』と指定していていました。
正直、20代前半のペーペーの小娘にはあまりよく分かっておらず、
そう書けと言われたからそのまま書いていただけなんだけど、
あの頃(30年前)に当たり前に使っていた素材と今の標準の違いを、
あらためて確認していくこともしてみたくなっています。

と、この流れで写真を載せるなら、当然畳の写真なんだけど、
畳より心奪われたのがこちら。畳屋さんの道具。

畳を敷き込む作業の時に、職人さんの6本目の指のような働きをしていていました。
かっこいいなー。

職人さんの道具へのあこがれが強いのです。
現場で、見たこともない便利そうな道具を見せてもらうと、うらやましくなっちゃって、
自分でも欲しくなって買ってしまい、そのまま一度も使うことなく仕舞われてるものも多々あり。笑
(ちなみに、今いちばん欲しいのは、バネ製造機なんですけどね。
 私の『バネ愛』を語りだしたら止まらなくなるので、この話はまたの機会に。笑)

昔、設計の師匠に、
「設計者は鉛筆が道具の職人にならなければいけない」
と言われたことがあり、職人でありたいと願う私のよりどころの言葉だったんだけど、
今となっては、そのたったひとつの道具さえ使わなくなってしまっている。
職人とか手仕事に憧れてばかりいるのは、やはり、自分の仕事の身体性の欠如なんだろうな。

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